現代版「子は鎹」〜「ラン・ファットボーイ・ラン」の鑑賞を終えて

《注意:ネタバレあるよ》

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大好きな俳優、サイモン・ペッグが出ているということと、最近、家族、会社の仲間、学生時代の友人からことごとく「太った?」と言われ続けたことがあり、思わずiTunesで買ってしまった一本。

主人公のデニスは、結婚式当日に妊娠した花嫁リビーを置いて逃げ出してしまう。自分に自信がなく、リビーに見合った生活を提供できるかという不安が大きすぎたのだ。
それから5年が経ち、ジェイクが生まれたが、デニスとリビーは別々に暮らしている。

デニスは、警備員の仕事はしているものの、酒を飲み、煙草、賭け事、寝坊はするし、何より自堕落な生活で体型もだらしがない。
そのくせ、ジェイクのためにもリビーとよりを戻したくて、いろいろやってみるが、全部裏目に出る(ジェイクとはとても仲がよい)。加えて、リビーの新たな恋人としてエリートビジネスマンのウィットが登場し、何かと対抗心を燃やす。
リビーがウィットの魅力を、「チャリティーマラソンに出ていること」と言い(自分の店にまで押しかけてきたデニスから逃げるための出まかせに近い)、デニスもマラソンに挑戦することにする。

ただ、デニスは劇中に出てきたおばあちゃんの言葉を借りれば、とんだ「カス野郎(“You prick!”)」なのである。映画を見ていて、デニスの生活態度にイライラしたし、ウィットに勝つ姿を想像できなかった。しかも、残り3週間でどう準備をすると?!昔、陸上選手だった描写があるわけでもなし。

なので、ウィットが何らかのかたちでマラソン大会を脱落し(デニスが、日頃鍛えているウィットに勝てるわけがない)、デニスが最終的にはマラソンを完走し、リビーの愛を取り戻すエンディングになるだろうな、と考えていた。

まあ、準備期間については目をつぶるとして…。自堕落なデニスがどうマラソン大会までこぎつけるかというと、やはり一人では何にもできず、リビーのいとこで、賭け仲間にデニスが完走する方に賭けたゴードンと、デニスが抱える不安に共感した大家のミスターG(すごくよいキャラ。笑顔が最高!)が強力にバックアップし、何とかトレーニングに励む。

物語中盤、マラソンは何とか完走できるのではないかという体になってきたが、リビーとの関係はどうだろう。

恋愛の話をする時によく出てくる話として、「男の恋愛は、フォルダごとに保存。女の恋愛は、上書き保存」というものがある。恋愛においてはそういう側面はたしかにあると僕は思う。

なので、たかがマラソンを走りきったくらいでデニスがリビーの愛を取り戻せたら、それはウソだと僕は感じた。それに僕がリビーの立場だったら、性格的にあんまりよい奴じゃなくても金銭的な余裕などからおそらくウィットを選んでしまう。

案の定、ウィットの自宅で開かれたリビーの誕生パーティーにおいて、プロポーズされ、リビーはそれを受ける。

その場にいたデニスは絶望に打ちひしがれ、自暴自棄になり、マラソン大会には出ないと言い出すが、マラソンを走りきらなかったら家を追い出すという大家の娘とゴードンにより、何とか大会に出場する決意をする。

しかし、マラソン序盤、ウィットに煽られ、無茶なペースで走り出し、二人とも転倒。ウィットは病院に行き、デニスはねんざをしつつもマラソンを続行。ボロボログチャグチャになりながら(全然颯爽としていないところが逆にいい)、走り続ける。

テレビ中継でデニスが病院に搬送されたと誤報され、リビーとジェイクは思わずデニスの名前を叫ぶ。

かけつけた病院に、たまたまいたウィットは、悪態をつき、いたずらをするジェイクにも汚い言葉を浴びせかける。ニュース番組で、実はウィットがデニスに足をかけたことが報道されたことと、自分の不調をロンドンという街のせいにし、シカゴに越そうと言ったことがトドメとなり、リビーたちはウィットの元を去っていく。

その後は、お決まりのパターンだ。
デニスはゴール直前に転倒。しかし、ゴールで待つリビーたちの姿を見て立ち上がり、走りきる。
デニスは、リビーの愛と尊敬を取り戻すばかりか、社会から尊敬され、ゴードンは賭けに勝ったお金でクルーザーを買い、ミスターGもランニングを始める。

エンディングでデニスがリビーとジェイクの3人で同居している様子はなかった。おそらくリビーの愛する気持ちは取り戻したが、すぐにすべてが元に戻るという訳ではないということだろう。そこのあたりのリアルさ加減はよかったと思う。

この映画を見て、落語の「子は鎹」を思い出した。この演目は、他に女をつくって家族を捨てた大工の棟梁が改心し、子どもをきっかけに妻との関係をやり直すというお話だ(しかし、デニスと違い、棟梁は改心するまでに長い時間をかけている)。
ウィットの自己中心的、他罰的な性格が悪かったことも大きいが、何より子どもの存在が大きかったのではないだろうか。おそらく、子どもがいなかったら、デニスとリビーの関係修復は難しかっただろう。

いつの時代になっても、子は両親の仲を取り持つ存在なのだ。



サイモン・ペッグの演技は相変わらずうまかったし、内容も面白かったが、映画特有の「ウソ」がチラホラ目につき気になった。なので、評価としては、
★★★☆☆


追記
この記事で、デニスのことをこきおろしているように書いてしまったが、ようは今の自分に似ていたのだ。振られた女性に未練タラタラなところとか(笑)いわゆる同族嫌悪。情けないなぁ。