「ズレた」世界で彷徨う人々〜映画「花とアリス殺人事件」の鑑賞を終えて

《注意:ネタバレあるよ》

 

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〜あらすじ〜

石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生のアリスこと有栖川徹子は、1年前に「ユダが、4人のユダに殺された」という3年1組に関するうわさを耳にする。彼女は自分の家の隣の屋敷が「花屋敷」と呼ばれ、この辺りの中学生たちを怖がらせていることも知る。隣家の住人のハナならユダについて何か知っていると聞かされたアリスは、花屋敷へ足を運び……。

Yahoo!映画より)

  

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アリス 「ねえ、な〜んで突然逃げたの」

花 「だって、あいつ、急にあんなこと言うからさ。あれって、愛の告白だよね」

アリス 「なんで?」

花 「あの痛み、一生忘れないって。どんっだけ愛してんのって話じゃん〜」

アリス 「…そうなの?」

 

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この作品にはちょっとズレた人々がたくさん出てくる。

 

たとえば、

転校初日、教員室に偶然いた男教師に好意を持ち、あからさまにしなをつくる、バツイチ小説家のアリスの母親。娘の担任教師が別の者だとわかるや否や、「残念!」とのたまう。

リレーの選手になったアリスに「オリンピック、出ろよ」と真顔でアドバイスしてしまう父親。

元々はいじめられっ子だったが、「ユダ」の噂に便乗し、呪いを解く儀式を行うことでクラスメイトを支配する陸奥睦美。

陸奥の茶番に踊らされるクラスメイトたち。

朝っぱらから手羽先を食べ、アリスに喧嘩を吹っかけ、逆にボコボコにされる男子(陸奥の奇行に驚き、失禁。クラスメイトから疎外されるという悲しい過去をもつ。個人的には一番面白かったキャラクター)。

 

 

そして、花がバレンタインデーに冗談で渡した婚姻届を、告白してきた女子たちに渡してまわる、幼なじみの油田光太郎。

 

 

「ユダが4人のユダに殺された」という噂の真相は、油田が告白してきた女子たちに婚姻届を渡してまわり、それに気づいた花がある日、ちょっとした悪意か嫉妬か、教室で花に包んだ蜂を油田の背中に入れ、アナフィラキシーショックを起こしてしまうというものだ。

実は転校していた油田は、「殺された」ことにされ、不思議系女子フーコによって間違った噂が広まってしまう。

 

花は、自分の行為によって油田が死んでしまったのではないかと罪悪感を抱き、引きこもりになってしまう。

 

上にあげた人たちは、どこか二重の世界を生きている。

自分にとって都合の悪い世界(現実)には蓋をしてしまい、自分に都合のよい世界にとどまっている(シュレディンガーの猫みたい…)。

 

そこに登場するのが、アリスである。

「外」の世界からやってきたアリスは、花の二重の世界を「ぶっ壊して」いく。

 

アリスによって外に連れ出された花は、数々の冒険を経て、油田と偶然再会する。

「生きている」油田と出会うことで、花のなかの、「油田が死んでしまっている」世界はなくなる。

そして、油田から「あの痛み、一生忘れない」という言葉をかけられる。

僕からすると、決して前向きな言葉とは受け取れない油田の言葉なのだが、花はちょっとズレた認識でもって、「愛の告白」と受け取り、逃げ出す。

 

世界は一つになったが、結局、花そのものはズレたままなのだ。

でも、それでいい。

電車の中で朝日に照らされる、花の満足げな表情を見ていたら…。

 

 

 

今回初めて岩井俊二監督の作品を見た。

独特の間で、若干イライラするシーンもあったが、人物の生き生きとした動きや背景美術には特筆すべきものがある。なので、評価としては、

★★★★☆